第4回 「日本人とアイデンティティ」

「あなたは日本人であることに誇りを持てますか?」

そんなふうに聞かれて、あなたならどう答えるでしょう?

国際化という言葉さえ、すでに時代遅れになってしまった感のある現在、海外で日本人が働くことも当たり前となり、海外で活躍する日本人の話も珍しいことではなくなってきました。

そういった人たちに憧れて、海外にチャレンジしていく日本人がさらに増えていくのは大変すばらしいことです。 しかし、海外で働いてみて初めて「自分は日本人だと強く感じた」などということもよく耳にするものです。

海外に憧れるあまり自分たちのアイデンティティを見失いがちな人も多いのではないでしょうか。たとえば、ただかっこいいからというだけで、アメリカ国旗がプリントされたTシャツを着てみたり、自分の国の文化をおろそかにして、外国文化の方が優れていると考えていたり。あなたにもそんな経験がありませんか?

私も、13歳、14歳のころ、一時ひどい日本人嫌悪に陥ったことがあります。それは私がイタリアのインターナショナル・スクールで人種差別を受けたことがきっかけでした。インターナショナルスクールはまさに人種のるつぼでした。その中では東洋人に対しての厳然たる人種差別があり、生徒会やその他の、常にイニシャティブをとっていたのは、いわゆるホワイトアングロサクソンであるイギリス人やアメリカ人だったのです。

肌の色だけで差別をされるということに納得がゆかず、とても悩みました。日本人であることにプライドを持てなくなってしまったのです。そして、それに拍車をかけたのが、海外で見かける日本人のマナーの悪さでした。

しかし、そのおかげで自分自身のアイデンティティについて、また日本について充分考えることができました。そうして出した結論が、「自分が日本人であるということから逃れられないのなら、日本という国を世界の中でもっといい国だと知ってもらおう」という考えだったのです。

海外で働きたい、生活してみたいという人はたくさんいると思います。海外には大いに出ていけばいいんです。しかしそのときに、日本人の、そして自分自身のアイデンティティを持った上でないと、結局根無し草になってしまうのではないでしょうか。 真の国際人というのは、しっかりとした自分を持った上で、相手の国のいいところをちゃんと取り入れられる人のことだと思います。

また、日本ではみんなと同じでないと安心できないという感覚を持つことが多いのですが、他人は他人というよい意味での自立した個人主義というものを学ぶことも大切です。それを学んだ上で初めて自立できたといえるのだと思います。

そのためにも、人とは少しくらい違っていても大丈夫と思えるくらいの自信を持つことが重要です。仕事でも自分自身を磨く上でも、目標とすべきなのは、自分に自信を持てるようになるということでしょう。自分自身のアイデンティティを確かなものにするためにも、自分が育った国や文化についてしっかりとした考えを持つこと、それが自信に繋がっていくのではないでしょうか。

「あなたは日本人であることに誇りを持てますか?」

そう聞かれたとき、あなたは自信を持って答えられるでしょうか?